波多野監督に聞く「選択と実現」、プロローグ篇。
セキュリティー業界に良い人材を集めたい!という想いを、波多野監督は
「集まると良いですね!」
と応援してくれる。
〈取材・文 木本亮 、 写真 キタガワミチヒロ〉
・波多野監督でなければならないワケとは
皆様の中にはご記憶の方もいるかもしれない。岡田准一さん主演映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇・革命篇」
セキュリティー業界には、特に熱烈なファンが多い。
警護するとはどういうことか、そんなテーマをこの作品から感じるからだ。官・民において志願者が増え、現職のSPや警護員は励まされた。世間の認知も広がった。
波多野監督の功績だ。私たちセキュリティー業界の人間は、その恩恵に預かったといえる。
そもそも私は、初めてお目にかかってからこれまでずっと、気さくなお人柄に感銘を受けていた。
「なぜ映画監督を目指し、実現してきたのか。私たちは、そこから多くのことを学べるはずだ。」
取材したいという思いは、やがて脳裏から離れなくなる。しかし、安易に講演や取材を受けるような人ではない。
「仕事の選択と実現。そういうテーマでお話を伺ってみたい。これから就職・転職しようとする人たちにヒントと勇気を与えたい。是非ともお引き受け頂けませんでしょうか。」と想いをぶつけてみるしか無いと思った。
・昭和48年生まれの同級生として。出会い。
昭和48年の9月、オイルショック後の九州地方。波多野監督は熊本県山鹿市で、そして私は大分市で生を受けた。初対面となるのは、お互いが34歳である2007年、ドラマ制作会議の場だった。
・ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第4係』が紡いだご縁
直木賞作家の金城一紀さんが脚本・原案を手がけた土曜ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第4係』
主演は岡田准一さん。共演は堤真一さん、真木よう子さん。総監督は「踊る大捜査線」シリーズの本広克行さん。波多野監督はこの当時、本広さんの弟子のような存在で、多くのシーンを「演出」として取り仕切っていた。
私木本は監修者として携わっていた。
初回視聴率・平均視聴率は深夜帯ドラマとしては歴代1位、最終回の18.9%は最高で歴代2位。深夜帯ドラマ史上初の平均視聴率15%越えを記録した。
・初監督作品が大ヒット
そしてこのドラマが映画化され、波多野監督がメガホンを握ることとなった。
木本「この映画はヒットするぞ、みたいな確信はありましたか?」
『撮影中から既に、かなりの手応えを感じていました。脚本が素晴らしいから。スタッフにも恵まれていました。』
しかし。映画公開から大ヒットにいたるまでの道のりで、絶対に忘れられない事がある。
・あまりにも大きな試練
「革命編」の公開前日に発生した、未曾有の地震、津波。
待ち望んでくれていた、特に東北地方のファンの方々は、映画鑑賞どころではなくなった。全国4割の劇場が休館、もしくは上映時間の縮小。
震災発生から数年を経たあと私は、当時被災したファンの方から言われたことがある。
「あの映画に勇気をもらいました。公開当時は映画館で見ることができなかったので、あとからDVDで観て。」
返答に詰まった。ありがとうございます、と私が申し上げるのは、おこがましく感じた。製作陣の顔が浮かんだ。
・映画は究極の学習映像
興行収入としては、野望篇と革命篇の合計で約70億。多くのファンに支えられた偉大な業績だ。収益の一部は復興支援のため被災地へ寄付された。
映画はエンターテイメントを装ってはいるが、人生の「救い」や「道標」になりうる。私は映画を「究極の学習映像」だと思っている。
・波多野監督から「セキュリティー業界へのエール」
波多野監督は「目指す方がいらっしゃれば良いのですが。」とセキュリティー業界の発展を願いながら、自らの経験談を語ってくれる。
“ STAR WARS フォースの覚醒 ”の公開日である12月18日。映画館に足を運ばずに18時から始めた取材は、終了予定の21時を遥かに過ぎ、深夜まで盛り上がった。
波多野監督にとっての「選択と実現」。これから数篇にわけて皆様にお届けしたい。きっと勇気が湧いてくる。
・スペシャルインタビュー公開の前に
プロローグとして最後に、ラルフ・ウォルド・エマーソンの格言を捧げたい。
“すべての革命は、一人の人間の心に思いつかれた、ひとつの思想に他ならない。”