対談 有識者×SPJOB

銃撃犯の息子に生まれて--偏見と闘い警備業を選んだ僕の軌跡

取材・文 木本亮 藤木将太氏、京都市生まれ35歳、警備会社勤務。建設中の東京オリンピック関連施設において安心安全を提供する日々。しかし彼の半生には安心感とは程遠い苦悩があった。少年時代に父親が起こした銃撃事件、その後の校内いじめ、社会からの偏見。居場所をなくした少年期から20代中頃までは荒んだ生活を送っていた。彼はどのように境遇を乗り越え、大人になり“守ること“を仕事に選んだのか。そして見据える未来はどのようなものか。
私が小学校6年生のとき、父がピストルで発砲事件を起こしました。すぐに新聞やテレビで報道されていたそうですが、その時私は数日前から怪我で入院中だったため事情を全く知りませんでした。数日して退院帰宅したところ、いつもは家にいない父親の車や所持品があり、母親の雰囲気も異様だったので思い切って尋ねたのです。母は苦渋に満ちた様子で事件当日のこと、直後から警察が家に来て色々と調べて行ったことなどを話してくれました。もともと父は市の公務員だったのですが、ある時期から暴力団に所属するようになり、それからは“家族揃った平穏な家庭”ではなくなりました。とうとう父はヒットマンとなって銃撃事件を起こし、およそ10年間服役しました。
--幼い時の家庭環境--
厳しい父親でした。妙な話ですが特に礼儀作法などについて。上下関係だとか挨拶だとか。しかし“俺のような稼業の人間にはなるな”とも。私の言動に少しでも妙な様子を発見すると烈火のごとく起こりました。息子には真っ当な道を歩んで欲しい。本当にそう願っているようでした。しかし事件のあと、学校で筆舌に尽くしがたいいじめを受けるようになりました。母親も姉も息を潜めて生活せざるを得なくなりました。私は悪い友達とつるむようになり荒んでいきました。20代前半の時には、私自身も警察のお世話になるようなことをしました。あれほど忌み嫌った父親の後を追いかけているようで、とても惨めな生活でした。
--転機--
26歳の時、父親が私に絶縁状を送ってきたのです。荒んだ息子の生活を知って激怒したらしく、お前みたいな奴は俺の息子ではない、縁を切りたいと。自分はあんな事件を起こし被害者や家族に迷惑をかけておいて変な話ではありますが。それから裁判手続きを経て絶縁を。ですから藤木という名前は元々の私の名字ではありません。母方の祖父の戸籍に入り、祖父の名字を頂戴しました。奇しくもこの時にハッと気がついたのです。私はもう父親とは関係ない。そして、偏見の目に対して怒りをぶつけ反抗している場合ではない、これからの人生はすべて自分次第なのだと。叔父にあたる人がビルメンテナンスや警備を営む会社を経営しており何かと面倒を見てくれました。私はそこで初めて真っ当な大人に出会いました。実直に生きているきちんとした人たちです。この時の感動は今も忘れません。
--警備業で生きていくワケ--
私は父親のような人間には絶対になりたくありません。暴力を生業にしていた父親とは真逆の人生、つまり人に安心や安全を与える道を歩きたいのです。今となってはわかるのです。警備こそ私の生きる道だと。そして将来は、いろいろな問題に苦しむ一般の人にも安全を提供できるよう、新しい時代にあった警備のあり方を模索していきたいのです。
顔や名前を出す懸念について尋ねると、彼はさらに爽やかな表情を見せた。
父親が暴力団員でヒットマンだった、私自身も荒れた生活をしていたなんて、そんな境遇はほとんどの人には理解しにくい、受け入れがたいことかもしれません。しかし話すことで私自身が救われるというか、呪縛のようなものから解き放たれていく気がします。不遇な家庭環境で育っても、それによる偏見があるとしても、全てはこれからの私次第です。
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エスピー・ジョブ 木本亮

投稿者の記事一覧

警護学校「SAFE HOUSE」総長
https://safehouse.toyko

□監修□
フジテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」('07)
映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇・革命篇」('10,'11)

□身辺警護考証□
NHKドラマ「4号警備」('17)

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