コラム

コラム「要人警護」 今までで一番あぶないと思った時(後半)

コラム要人警護2

「このままだと群衆に圧し潰されてしまう・・・。」

 

警護対象者を円陣で囲むようにして全方位の壁を作る。全体重を群衆に向けて抗い続ける。私を含めて警護は5人。

「道を開けてください!!」

「押さないで!危ない!」

 

群衆の手が四方八方から伸びてきて、警護対象者を掴み取ろうとしていました。

〈もし掴むことが出来たなら、天国に行けるかもしれない。〉

そんな妄想に取り憑かれた狂信者のようだと感じました。

 

群衆の中からも「痛い!」「危ない!」という叫び声。

 

逃げ場となるリムジンに引き返したい。30メートルほど戻らなければならない。しかし絶望的に遠い距離。

ハリウッド式の安上がりな来日PR。確かに効果あり。引き換えにこの惨事。

 

「もうダメかもしれない。潰されて踏みつけられるかも。」

 

あきらめかけた瞬間に、不思議なことが起きました。どういうわけか、背中の圧力がフッと軽くなったのです。

さっきまで私の背中を押していた人たちが、このままでは自分たちも危ないと思ったのか、群衆の圧力に抵抗しはじめました。

私たちをアシストしてくれているかのようでした。

 

「ありがとう!!」

後方に向かって私は思わず叫びました。

 

考えてみれば、何となく集まってきた人たちも知らず知らずのうちに巻き込まれてしまい、後方の人たちから押されるカタチになって困っているのでしょう。

そのさらに後方の人たちも悪意はなく、なんとなく有名人を見たくて前に出ようとしていただけかもしれません。

 

群衆の一部が、冷静になるキッカケを掴んだようでした。

まるで警護員のアシスタント役を買って出てくれたかのように、数人が外側の群衆に向かって防御壁になりはじめました。

警護対象者を囲む輪が少し広くなりました。

 

「あのリムジンに戻りたいから手伝って!」

思わずお願いしてしまいました。

 

厚みを少しずつ増していく防御壁のお陰で前進できるようになり、這々の体でリムジンまでたどり着きました。

ありがとうございます。どこの誰だかわからないけど。

 

結局のところ、知らない人たちに助けられたという話。

 

 

 

エスピー・ジョブ 木本亮

投稿者の記事一覧

警護学校「SAFE HOUSE」総長
http://safehouse.toyko/

□監修□
フジテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」('07)
映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇・革命篇」('10,'11)

□身辺警護考証□
NHKドラマ「4号警備」('17)

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