対談 有識者×SPJOB

第3回「ようこそ、戦争学マスターの道へ!」

元海上自衛官 護衛艦さざなみ通信士 戦争学修士ロンドン大学王立学院 MICCHI インタビュー by 木本亮

木本「戦争学とはつまり“勝つための学問”ということ?」

 MICCHI「はい。さらに厳密に言えば“ある政治目標のために軍事力をどう使うか”です。例えば北朝鮮の拉致被害者を取り戻したいという政治目標があるとします。外交的手段としては交渉や資金援助による方法です。軍事的手段であれば、特殊部隊を使った人質奪還、侵攻して国土を制圧するなどいろいろな選択肢があるわけです。軍事的手段を取る場合にはどうすればいいのか、コストベネフィットはどうなのかを研究します。」

木本「第二次大戦中の日本対イギリス戦について学んだりしましたか?」

MICCHI「はい。ちなみに僕の修士論文は1931年〜1945年の間の満州国における対反乱作戦、つまり現地でのゲリラ活動をどうやって抑えるかというテーマです。」

木本「どうやって抑えたの?」

 MICCHI「運の良さが6割、施策の成果が4割ではないかという結論です。」

木本「ずいぶんラッキーですね。」

MICCHI「施策という観点では、当時の大日本帝国は教育や医療など人道支援のために満州に赴任した役人が馬賊に殺されたとしても、それは名誉の戦死だという空気がありました。ゲリラ対策の基本は、現地の生活水準を向上させて人心を掌握することです。官民問わず必要な人材を日本から危険地に送り込める、国民も納得、死ねば名誉、そういう時代でした。現代はそうではありません。もしNGO職員が一人でも殺されたら、即座に全員が撤退となり支援や統治が進まなくなります。」

木本「国内の空気作りというか、国民の操作というか。時代ですね。」

MICCHI「運の良さについて申し上げますと、野宿が可能か不可能か。つまり満州は寒くてゲリラが野宿できなかったことです。」

木本「日本軍は満州の寒さに助けられた?」

MICCHI「はい。村人と兵士を分離して居住させる集合部落(一般の人たちに住んでもらう居留地のようなもの)の例があります。ゲリラは村に逃げ込んで農民の中で姿を隠します。討伐のために村を攻撃してしまうと、一般人や子供まで巻き添いにしてしまい、結果として日本軍に恨みを抱き、一般人がゲリラに加わってしまうという悪循環が生まれます。日本軍は居留地の周囲を警備してゲリラが逃げ込めないようにしました。満州ではこの方法でゲリラと一般人の分離だけでなく掃討にも成功しました。その理由は、寒すぎてゲリラが野宿でサバイバルできなかったからです。村に入れないゲリラは冬になると野宿で凍え死に、自滅していった。」

木本「なるほど!」

 MICCHI「もし満州が野宿可能な温暖な気候だったら、居留地を作ってゲリラと一般人を分離しても、ゲリラはしぶとく生き延びて反乱を繰り返したでしょう。日本軍の巧妙な戦略だったとも言えるし、運が良かったと言えます。さらに運が良かったと言える理由があります。満州事変で日本が占領した後に、蒋介石と張学良は残存部隊に対し日本軍への抵抗をやめるように指示しました。それに反発した一部の勢力はロシアからの支援を受けて抵抗しましたが、ロシア自体がまだ革命から間も無く、不安定で支援も不十分となり反乱勢力は弱体化していきました。それが運の大部分と言えるでしょう。」

木本「さすがマスター!」

 

第4回「英国戦争学の厚みと歴史」に続く


編集後記1by木本亮・戦争学修士って、なんじゃそりゃ!

昨年の夏だろうか。ある人から「面白い人がいるよ!紹介するから会ってみたら!!」と勧められた。

それから2度、3度とお茶をしたり仕事っぽい話をしているうちに・・・こうなった。

お互い人生の過渡期にロンドンに引き寄せられ、分野は違えど安全保障について学んだという共通点。「リヒャルト・ゾルゲもこのOLD IMPERIAL BAR(帝国ホテル内にある歴史あるバー)に通ったらしいですよー」なんて話題で盛り上がれる貴重なご縁だ。

ちなみにMICCHIさんも私も、アルコールは一滴も飲まない(笑)。にもかかわらず店内では一番テンションが高かった。

奇妙な会話内容にもかかわらず丁寧にサービスしてくださる帝国ホテルさんにも感謝したい。

エスピー・ジョブ 木本亮

投稿者の記事一覧

警護学校「SAFE HOUSE」総長
http://safehouse.toyko/

□監修□
フジテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」('07)
映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇・革命篇」('10,'11)

□身辺警護考証□
NHKドラマ「4号警備」('17)

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