対談 有識者×SPJOB

エッセイスト関口暁子による「木本亮の今までとこれから」

木本亮の今までとこれから 関口暁子によるインタビュー

インタビュアー 関口暁子プロフィール

在学中にドイツ留学。卒業後、日本とドイツで複数の企業勤めを経験し、2006年独立。
複数の雑誌にて渡部昇一、日下公人など日本を代表する論客との対談をはじめ、経済界のトップや芸術家、文化人の取材記事などを手掛けるほか、エッセイスト「あかつきゆうこ」としても活動。
2014年度内閣府経済社会研究所「東京オリンピック・パラリンピックにおける地域活性研究」有識者委員。
著書にエッセイ集『幸せの隠し味』(フーガブックス刊)がある。

 

「木本亮の今までとこれから」《文 関口暁子》

 

誰もが安心して繋がり合う事の出来る社会を目指して

インターネットをはじめとするさまざまなメディアの発達で、情報の共有や知識の習得が容易になった。ことにSNSや、情報プラットフォームの充実は、私たち一般人同士が、互いの悩みを相談し、解決し合ったりできるなど、他者と「繋がり」やすい時代となった。

その一方で、他人同士が安易に繋がることへの不安やそれに派生する事件も発生。繋がることへの恐怖心や疲労感が同時にあることも事実だ。しかし、不安や恐怖心さえ取り除けば、ソーシャルメディアは私たちの生活をより便利にしてくれるツールとなる。

「人は本来、繋がっていたい生きもの」そう断言するのは、木本亮。

岡田准一主演の出演したドラマ「SP」(その後、映画化)でのSP=要人警護の実際の動きや仕事内容、さまざまなシーンの想定などを監修したのが木本だ。木本は民間企業での要人警護の分野では先駆者と言っていい。若くして単身イギリスに渡り、その特殊な技能を身につけ、帰国後、彼の能力は企業だけでなくドラマ・映画界も頼りにするところとなった。

国内外でセキュリティービジネスに従事し、日本における民間の「要人警護」ビジネスをリードしてきた木本の生き様と見つめる未来をご紹介する。

「そつ」のない秀才少年、海外に逃亡す?

木本亮は1973年、大分県に生まれた。専業主婦の母と銀行員の父、そして年の違わぬ妹の4人家族の長男として、豊かな自然環境に包まれ、のびのびと少年時代を送った。そして父の話す「良い将来」像に影響され、高校は進学校へ入学。「良い大学→一流企業=良い将来」という目標に向かって、受験勉強に勤しむ毎日に変わっていった。木本自身もそれこそが素晴らしい未来だと、信じて疑わなかったのだ。

木本は浪人して京都大学工学部数理工学科に合格。入学を果たして、初めて達成感を味わったと当時の喜びを述懐するが、その喜びはあっけなく崩れ落ちた。

「在学中のアルバイト先では、大学も歳も関係なく、仕事ができる人が偉い。それまでかたくなに良い大学に行き、一流企業に入ることが良いと信じてきたのに、仕事ではそれは関係ないということがわかった。」

それは「反動」という言葉が近いのだろう。アルバイト三昧の学生生活を過ごしたのち、4年生のときに退学。ヨーロッパを放浪しているときに、イギリスで出会った日本人の知人から「面白いことをしている会社があるよ」と紹介されたのがイギリスの警備会社だった。

「日本の警備会社というイメージよりも、危機管理会社という方が実態に近いかもしれません。その会社には軍人や警官などが参加する要人警護や人質救出などの職業研修プログラムがあり、参加することになりました」

一流大学に行き、一流企業に入社し、勤め上げるという「成功のスタイル」に魅力を失っていた木本青年は、その研修を嬉々として受けていた。研修は受講するのも修了するのも容易ではなく、実際に研修を受けた者のうち、卒業できたのは半数以下だったという。訓練が修了すると、お金を稼ぎに日本に帰国、そして渡英し、さらに高度な研修を受ける・・・。これを繰り返し、同社に就職。本格的に帰国した時、木本はすでに27歳になっていたが、特殊な能力を身に付けた木本に、仕事の心配はなかった。複数の警備会社から引き合いがあり、時には警備員の講師として教壇に立つこともあった。

「天は自らを助くる者を助く」とは有名な言葉だが、木本の半生は、可能性は自ら手繰り寄せるということを、私たちに教えてくれる。そうして、日本屈指の「要人警護のプロ」としてその存在感を放つようになったのである。

学生でもお金の心配をせずに受けられるサービスを提供したい

日本に帰国後、いくつかの企業での仕事を請け負った後、セコムから声がかかる。要人警護部隊を強化しようとしていた時期だった。「優秀な社員がたくさんいましたから、こんな人たちと仕事ができるなら楽しいだろう、と思いましたね。それと同時に、自分はいつか会社を辞める身だという思いもつねにありました。自分がいなくなっても良いように、すべての思いと技術をスタッフには注ぎこみました」

当初、3年ほど勤務して退職し、次のステップにコマを進めようと考えてはいたが、結局、7年在籍した後に退職、2014年6月に独立と相成った。在職中から、ストーカー被害のニュースを見るたび、木本にはもっと自分にできることはないか、と考えるようになっていた。その胸の痛みは、いつしか自分が背負った十字架のようにすら、重く感じるようになっていく。

「現場を指揮していて、思ったことがあります。一つは、身辺警護の脅威のほとんどは、ストーカー行為だということ。これを社会から減らさないと、安心して『繋がり合う社会』が実現できません。そしてもう一つは、大企業には自分の代わりはいるかもしれませんが、自分の思い描いたサービスを提供するには、その中にいてはできないかもしれないということ。個人が気軽に利用できるストーカー対策専門の会社は、自分がリスクを負って独立してでも作らなければならないとずっと思っていました。」

木本の理想は、サービスが「ある」というだけで安心感が提供できること。今、ストーカー被害に遭っていない人から見ても「これがあれば、万が一の時に安心」。そう思ってもらえるよう、サービスを充実させ、多くの人に安心を届けたい。親にこそ相談しづらい、そう思いがちな思春期の子供たちが相談できるサービスも、こうした思いから提供している。

「安心を脅かす不安というのは、ストーカーだけに留まりません。家庭内暴力、就職に関する不安、鬱・・・。そうしたさまざまな不安をいかに取り除くことができるか。当社の主要サービスは、私の専門分野であるストーカー対策ですが、いつか社会の不安をそれぞれの専門家がサポートする。そういう組織が作れたらいいと思っています」

木本の心にはいつも「不安」があった。それは小学生の頃に遡る。毎夏、テレビで繰り返し見せられる戦争の映像。「本当に戦争になったらどうしよう」。小さな胸に抱えた不安は、大人になった木本に「安全へのサポート」という使命感を与えることになる。

「ストーカー被害から立ち直り、以前より強く嬉々として生活している元被害者もたくさん見てきました。ストーカー行為は許されるものではありません。しかし被害者が自己成長を遂げる苦難の一つと受け止めることも大切だと思うのです。私たちは被害回避のためのテクニックをアドバイスするなど、プロとしてのサポートをしますが、最後に乗り越えるのは被害者自身。そういうメンタルな部分も含めて、相談者に寄り添い、解決の道をともに歩みたいと思っています」

多感な少年期、周りが用意した「幸福像」に憧れながらも、自身の道ではないと自覚し、独自の道を切り拓いてきた木本だからこそ、できるサポートの形がある。それは相談者を表面的に慰め、一方的に「指導」するのではなく、ともに成長する相手として相談者と向き合い、自身で力強い人生を歩む手助けをすることだ。

「誰もが安心して繋がり合える社会」を目指して、道はまだ始まったばかりである。しかし、「宇宙の営みは人類を裏切らない。確実に私たちの社会は良くなっている。」そんな信念を持った男になら、それが実現できると信じたい。そして、私たち自身の心の強さが、その「安全な社会」の実現を後押しすることは、言うまでもない。

エスピー・ジョブ主催 木本亮

投稿者の記事一覧

□略歴□
京都大学工学部を自主退学しロンドンの警護訓練学校に留学。帰国後は通常の警備会社が対応しない「ややこしい案件」などを好んで下請け。そのご縁で2007年に大手警備会社の警護部門新設時に責任者就任。2014年に再び独立し、オンライン犯罪抑止システムの開発に取り組みながらセキュリティーチーム「SP7」の代表を勤める。

□警護技術監修□
フジテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」('07)
映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇・革命篇」('10,'11)

□身辺警護考証□
NHKドラマ「4号警備」('17)

□著書□
『SPのお仕事』(産經新聞出版)

□コンタクト□
kimoto@sp-job.com

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