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民間警察のゴッドファーザー 佐々木保博 株式会社セーフティ・プロ 

佐々木社長 アイキャッチL

警察や警備会社では対応できないような、様々な困りごとに応えたい。その想いが込められた新しいコンセプト=民間警察。佐々木社長は28年間、埼玉県警の警察官として組織犯罪対策にも携わった。

〈取材・文 木本亮、写真 キタガワミチヒロ〉

・想いの根源

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優しく知的な物腰の紳士。しかしこういう人に限って、怒らせると凄く怖いのだ。

型破りな刑事時代。上層部が“制御できない”と匙を投げるほどの仕事ぶり。こうと決めたら、絶対に自分を曲げない。

「そのせいで左遷されてしまう事は、一度や二度ではありませんでした。」

そんな佐々木社長の刑事時代には、今でも語り継がれる功績がある。暴力団関係者が殺害された抗争事件。そこで実行犯の逮捕に、多大な功績があった。本部長表彰を受けた。

しかし30代半ばから、佐々木刑事の脳裏に、ある思いが芽生えていた。

本当の正義を貫くこと。困っている人を救うこと。「警察官であることが、必ずしもベストとは限らない」と。

政治の世界で、あるいは民間企業で想いを実現する道を模索し始めた。

そして48歳のとき、デスクワークに異動させられた。50歳の節目を目前にして、決断した。

国会議員の秘書、そして起業

退職後すぐ、国会議員の公設第一秘書を努めた。政界への足掛かりだ。しかしそれは、わずか1年で終わった。

「運転手の仕事。家族にはそう思われていました。」

親の職業を尋ねられたご息女様は当時、パパはヤクザから運転手に転職した、と担任教師に話した。

「娘は本気でそう思っていた。先生はびっくりしたでしょうね。」

今はタイミングではなかったと、方向を起業に切り替えた。社名は株式会社セーフティ・プロ、略してSPだ。

フジテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第4係」の大ファンだった佐々木社長は「明らかに“狙った”ネーミングです」と初対面の時に大笑いしてくれた。

監修者として制作に携わった人間から『一度ご挨拶にいっていいですか?』と打診されるなど、この時は想像だにしなかったはずだ。快く応じてくださったからこそ、その後数回にわたる飲み会を経てこの取材が実現している。ご縁とは本当にありがたい。

話を戻す。

2009年、警察や警備会社が対応できない領域に手を差し伸べる「民間警察」が、JR北与野駅前のインキュベーション「新都心ビジネス交流プラザ」に誕生した。

民間警察って何だ!?聞き慣れない四文字の造語。周囲からは戸惑い、驚き、賞賛の声が上がったことだろう。

・少年時代

木本「保博、という社長のお名前の由来についてお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「博学を保つ、という意味で保博だと聞きました。親はまさか私がこんな風になるとは思わなかったみたいです。岩手で生まれました。父親が国鉄(今のJR)に努めていた関係で、仙台に引っ越したり、また岩手に戻ったりと、転勤しました。」

木本「どんな少年時代でしたか?」

「姉がいた事もあり、ママゴトなどをよくしていました。」

木本「ママゴトですか!?」

「そんな子供だったんです。ちなみに幼稚園を中退しています。一人で通う事ができなくて。母親と一緒じゃないと外に行けないような子供でした。母親も毎日は付き添えなくて。だから中退です。」

木本「記憶に残っている幼少時のエピソードはありますか?」

「底なし沼にはまって死にそうになったり。雪の鎌倉に埋まって窒息したり。ある時は線路を歩いて、電車を止めた事があります。次の日は校長に呼ばれて、こっぴどく怒られました。」

木本「お父様は国鉄なのに!」

「大人しいわりには、やんちゃなこともありました。」

木本「将来はどうなろうと思っておられましたか?」

「医者になろうと思っていました。高校生くらいまで。しかし成績は悪くはないのですが、医学部に入れるほどではなく。大学では電気工学を専攻していましたが、1年生のときからハッキリと刑事になろうと決めていました。」

木本「ずいぶんと路線変更ですね。」

「ドラマの影響があると思います。大学に入るか入らないかの頃に“太陽に吠えろ”の放映が始まりました。“西部警察”も全盛期で。」

・マル暴のキャリア

木本「大学時代はどのように過ごされていましたか?」

「友達に誘われて電気工学を専攻したのですが、1年生の時の進路調査でハッキリと警察志望です、と。」

木本「警察で何をしたいとお考えでしたか?」

「刑事になりたいと思っていました。公安や知能犯対策の分野に興味がありました。半年間の交番勤務後に留置所、窃盗取締などの部署を経て、警察学校で捜査専科講習を受け、知能犯の方面へ。詐欺、横領、選挙違反などを取扱う仕事ですね。」

木本「印象的な新米時代のエピソードはありますか?」

「お肉屋さんで。贈収賄について調べるために、肉をきっている横で調書をとったりしました。字なんかもう、めちゃくちゃで、殴り書き。当時はよく菓子折りの下に茶封筒がくっついていて、そこに現金が入っていたりして。事件化できるかどうかは選挙後の情勢に影響を受けます。肉屋の件は結局、上層部からストップがかかりました。」

木本「その後もずっと刑事のお仕事を?」

「2年間刑事をやった時に上司とトラブりまして、すぐに左遷されてパトカー勤務になりました。私ほどたくさんの部署を異動した人間も珍しいと思います。」

木本「マル暴としてのキャリアは、いつから始まったのですか?」

「機動捜査隊にいた時、まもなく暴力団対策法が施行されるとのことで、それが平成4年です。その直前から対策準備室に配属になりました。そこから、退官するまでほとんどの期間は、いわゆる“ヤクザの世界”ですね。」

木本「捜査四課のお仕事は、一般の目から見るとわかりづらい部分がありますね?」

「ヤクザが起こした事件は全て、殺人、詐欺、窃盗など何であろうと、捜査四課の仕事になります。通常は殺人事件だと捜査一課、知能犯は捜査二課、泥棒は捜査三課と別れていますが。」

木本「あらゆる種類の犯罪に対処すると?」

「そうです。ヤクザが起こす事件は全て、ということです。」

ヒットマンについて

少しディープな話になる。

要人警護に携わる一人として私は、気になる事があり、思い切って聞いてみた。

木本「私は以前、ヒットマンとして相手の組長を射殺し、服役・出所した人に話を聞いた事があります。その人は、出所時に所属団体が解散されており、戻るところがないという状況でした。」

「そういう人もいますね。組のために尽くしたという功労が、報われませんね。組自体が無くなっていますから。私が捕まえたヒットマンは、いわゆる“お勤め”の間は家族のケアがしっかりされていました。出所後は幹部として復帰しています。」

木本「誰がヒットマンに選ばれたとか、事前にわかるのですか?」

「わからないのです。地下に潜伏してしまいますから。」

木本「潜伏というのは?」

「表立った活動を一切行わなくなるのです。そして、どこかに籠って訓練を始める。そういう訓練があるのです。どこを刺せばいいとか。お腹より上だと殺人になるけど、下だと傷害致死で罪が軽く済むとか。どこを刺して、刃物を体内でどうひねるとか。」

木本「ヒットマンを選ぶ基準、お勤めを果たしたあとについて教えて下さい。」

「基本的には幹部候補、出世コースですね。しかし、たとえば上層部の指示無しで犯行が行われる事も昔はたくさんありました。組のためを思って勝手に、とか。最近は少なくなったかもしれません。勝手に動いたとしても、警察は使用者責任ということで、組長を逮捕しますから。」

・「正義」とは何か

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先述のように、純粋な思いで職務に邁進した佐々木刑事は、大きなジレンマを抱えていた。組織の壁、上層部の意向、政治的な駆け引き。

「60歳の定年まで警察官を続けるつもりは、早い段階から無くなっていました。50歳で辞めるか、30年勤務して52歳でやめるか。結果として50歳の時に通信指令センターに異動となり、辞めるなら今だと思いました。」

退職後は議員になる準備を進めるつもりだったと言う。ところが支援者が他界し、しかも横峯議員の公設秘書としての活動が政界進出につながらない事を悟る。

そして起業に至ったわけだ。

軌道に乗るまで

起業直後は大きなトラブルが続き、周囲には「佐々木はもうダメかも」と心配をかけたりした。

しかしあるとき、企業から依頼されたトラブル対策で成果を出した。それがきっかけとなり、警備業務を引き受けるなどして徐々に経営は軌道に乗り始める。

創業8年目となる今、スタッフは40人近くまで増えた。給料日に開催される「飲み会」では筋肉自慢、昔取った杵柄自慢、お悩み相談で盛り上がる。

社員同士の信頼関係をとても重視している。実際のところ、退職率は極めて低いという印象だ。

・求める人物、新規事業について

幹部に求める人物像について。

「仕事を楽しめる人間です。特別な才能はなくても、そういう人は、絶対に裏切らない。頭がいい、それだけだと狡さやごまかしが出てくる。いくら仕事熱心で優秀でも、それだけでは、いつどうなるかわからない。しかし、楽しめる人間は必ず仕事をやり遂げるし、人を裏切らない。」

犯人逮捕で歩合給が出るわけではない。そんな刑事の世界で長く生き、今は経営者となった佐々木社長。その言葉には、目先の成果報酬で社員のモチベーションを上げる経営理論を超えた「何か」がある。

新規事業について、佐々木雄希副社長にお話を伺ってみた。副社長は、佐々木社長のご長男。博士号をもち、総合格闘技で鍛える強者だ。

大学院を卒業した1年半前、決して会社が好調とは言えない時、入社した。新サービスの名は、スクールポリス(School Poice)。略してSPだ。偶然ではなく、ちゃんと“狙った”ネーミング。

「月々数百円の拠出金で、学校の生徒全員が守られる仕組みです。オンラインの相談受付回答システム、通学路における身辺警備など、いざという時に頼れるあらゆるサービスを学校法人に提供します。」

・「成功」とは何か

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取材を終えたあと、勝手ではあるが、昼食に出かけるお二人にシャッターを切った。カメラマンのキタガワがいなかったため、思わず自分の手持ちカメラで。

何気ない普通の父子関係。それすら築けなかった私にとって、この後ろ姿はあまりにまぶしく、宝物のようだ。

そして改めて気づかされた。

『お父さんの仕事を手伝います。そしていつか、僕が引き継ぎます。』

1年半前の低迷期。ご子息が入社を決意した時すでに、この父子は「成功」していたのだと。


株式会社セーフティ・プロ

代表者:佐々木保博

本社:さいたま市中央区上落合2-3-2 Mio新都心


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□略歴□
京都大学工学部を自主退学しロンドンの警護訓練学校に留学。帰国後は通常の警備会社が対応しない「ややこしい案件」などを好んで下請け。そのご縁で2007年に大手警備会社の警護部門新設時に責任者就任。2014年に再び独立し、オンライン犯罪抑止システムの開発に取り組みながらセキュリティーチーム「SP7」の代表を勤める。

□警護技術監修□
フジテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」('07)
映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇・革命篇」('10,'11)

□身辺警護考証□
NHKドラマ「4号警備」('17)

□著書□
『SPのお仕事』(産經新聞出版)

□コンタクト□
kimoto@sp-job.com

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