コラム

コラム「要人警護」 弾丸を受け止める契約(前半)

コラム要人警護弾丸を受け止める契約7-1

大切なテーマなので、のっけから核心に。

 

『弾丸を受け止めます。身を挺して守ります。』

そのような契約は存在しません。官民問わず。

 

『命を犠牲にして守らなければならない。』

そんな法律は日本にはありません。

 

今回は要人警護の意外な側面として、契約上の義務や法律という観点からお話をさせて頂きたく存じます。出だしから唐突でした、すみません。

 

まず前半は、

「SP(警視庁警備部警護課の警察官)と警護対象者(総理大臣、閣僚、党首などの政界要人)には互いに何の契約関係もない」

という話しです。

 

例えばSPは総理大臣と、

いつからいつまで、どこからどこまで、何人で、料金いくらで守ります。できなかったときには・・・責任は・・・

と約束を交わしているわけではありません。だから相互の権利義務は何もなく、支払いの必要もない。

SPは総理大臣を守らなければならないとか、総理大臣はSPを帯同しなければならないという法律は日本にはありません。SPが総理を警護しなかったとしても、総理が警護を拒否しても法律違反にはなりません。だから何の罰則もありません。

ちなみにアメリカでは少し事情が異なります。一定条件下では大統領は警護を拒否できないとか、大統領の意に反してでもシークレットサービスが実行できる権限などを定めた法律があります。

 

警察は総理を警護することは必要だと考えている。総理大臣はSPの存在を拒否せずに受け入れている。

警察は勝手に一生懸命、総理につきまとう。総理は仕方ないものとして協力している。そういうこと。

 

ていうか、それってどういうことよ?っていう話ですよ。

 

過去の歴史には、警護をかたくなに拒否してSPを帯同しなかった政界要人の例がたくさんあります。

昔と比べて現在は少なくなりましたが、それでもゼロではありません。

たとえば中国大使はSPを車に乗せない、日本共産党党首はそもそもSPが視界に入ってくることさえ許さないという・・・。

日頃はそうでなくても、例えば秘密の会合を行うから合意の上でSPをハズすとか、行動スケジュールを意図的に教えず密かに行方をくらますとか、そんなことは今までも、そしてこれからも。

 

ある大臣が公用車(助手席)に乗せてくれないから走って追いかけた。当たり前だが無理だった。来る日も来る日も置いてけぼりを食らい続けた。1年間もそんなことを繰り返し、ようやく熱意が認められ同行を許されるようになった。

 

状況によってはSPの存在が不都合だと思う要人もいる。

 

近年では慣例として好意的に受け入れられるようになった。偉大な先人たちの苦労の賜物だ。

昔の苦労話を語ってくれるSPのOBもいました。

 

完全に余談です。警護が必要な状況なのにSPを拒否しまくっていた小泉元総理のような方もいますし、もういらないでしょうというのにいつまでもSPをよこせと言い続けた中曽根元総理のような方もいます。このお二人は警護に対する考え方だけでなく、政治的にも大きく対立していましたね。中曽根元総理は小泉総理(当時)にむかって「政治的なテロみたいなものだ!」なんて。いろいろと考えさせられます。

 

話しを戻しまして。前半で何が言いたいのかと申しますと・・・

 

警護についてSPと政界要人の間に定めた契約や法律は何もありませんから、まして「弾丸を受け止めなければならない」とか「命を犠牲にしてでも守らなければならない」という条項など存在し得ないということです。

 

誤解のないように申し上げておきますと、SPの方々が一丸となって「弾丸を受け止める」ことを前提に公務に従事していることは事実です。あくまで警察内部の規定ではありますが、警護について定めた「警護要則」には、身を挺して職務を遂行しなければならない旨の文言が明記されています。(これはすごいことなんですよ!)

 

では民間においてはどうなのか。そのあたりを後半でお話ししたいと思っております。

 

「まさかウン百万とかウン千万で弾を受ける契約があるのか?!」なんて想像を巡らせながらお待ち頂けますと、冥利に尽きます。

 

前半、おわり。

 

エスピー・ジョブ 木本亮

投稿者の記事一覧

警護学校「SAFE HOUSE」総長
http://safehouse.toyko/

□監修□
フジテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」('07)
映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇・革命篇」('10,'11)

□身辺警護考証□
NHKドラマ「4号警備」('17)

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