秘密にすべき?隠すべき?
いいえ。大々的に行うべきです。
前半に引き続き、企図者をあきらめさせるマジックという話です。
「無理かもしれない」「見抜かれるにちがいない」と確信させるための演出。
悪だくみをする人物に“成功の見込みは薄い”と思わせたいのです。
例えばサミット、オリンピックなど国際行事の直前になると「万全の警備体制」が声高にPRされます。
ニュースなどメディアで大々的に。
見せても良いのだろうか?
教えると企図者に裏をかかれるのではないだろうか?
と心配に思う方もいるかもしれません。しかし、警備とは・・・
『見せてみせて見せまくるもの』
です。警備業界では「見せる警備」が今は常識。
つまり警備側はメディアを通じてこう言いたいのです。
「こんなに万全な体制ですから、テロリストの皆様はあきらめた方がいいですよ」と。
ご参考までにマニアックなことを申しますと、以前は少し事情が違ったようです。
ある時期まで日本では、要人警護は隠密に行うべきと考えられていました。日本の文化特有の考え方でしょう。
しかしその常識が変わる出来事がありました。
三木首相殴打事件です。
(昭和50年6月に日本武道館で行われた佐藤栄作元首相の葬儀において三木首相が暴漢に顔を殴られた)
私の警護の師匠で、佐藤栄作氏が総理時代にその警護官を勤めていた方がいらっしゃいます。昭和の警備史の生き字引であるこの方が、この事件をキッカケに変化した警護のあり方について、当時を振り返って話してくれたことがありました。
「警護のスタイルはこの事件を境目にして、それまでの“忍者型”から“ゴリラ型”になった」
もはや隠密な体制では守れない。そう考えざるを得ない出来事だったようです。警備においても日本は欧米化せざるを得ないと。
かくして現在は、あらゆる警備活動は「あからさまに見せる」ものとなりました。
くどいようですが、最大の理由の一つは企図者の出鼻をくじくこと、企みをあきらめさせるためです。
悪事を企む人に魔法をかけましょう!「あなたの計画はきっとバレる。失敗する。」と。
後半、おわり。