コラム

コラム「要人警護」 警視庁捜査二課から電話が?!(後半)

コラム要人警護4

警護対象者の機密情報をおいそれと伝えてしまうことには抵抗があります。かといって、警察に協力的でないと思われてしまうことは、警備に携わる人間として得策ではないでしょう。今後の仕事や人生に、相当な悪影響がありそうです。

警護対象者を裏切らないこと。警察には協力的な態度をとること。この矛盾する要件を両立することが、このときの私のミッションです。

 

受話器をあげて教えてもらった直通番号を押して・・・はいけない。

その前に、本物かどうかを確かめるための手順を踏まなければ。

 

方法は驚くほど単純。まず警視庁の代表番号にダイヤルします。

03-3581-4321

 

「はい、お電話ありがとうございます。こちらは皆様の味方、警視庁です。どうなされましたか?安心してご用件をおっしゃってみて下さいね!私が全力で皆様のご要望にお応えします!」

 

なんていうはずはなく。

女性オペレーターが「警視庁です」とクールに応答してくれます。いくら待っても次の言葉はありません。

無駄な単語を発することは税金の無駄遣いだと言わんばかり。

 

『刑事部の捜査二課をお願いします。』

「お待ち下さい」

 

数秒ですぐに繋がり「捜査二課ですっ!」という体育会のノリ。

 

『木本と申します。××様におつなぎ頂けますでしょうか?』

と、今度こそ堤真一さんをイメージして言えた気がする。

 

電話口からは(あー、あの案件ね。あんたも関わっちゃって大変ね。)という同情的な空気が伝わってくる。

 

「お電話代わりました。捜査二課の××です。警護対象者の行動記録、調べて頂けましたか?」

たしかに先ほどの人だ。

 

『何時に自宅を出発し、何時に帰宅したかという記録なら残っています。警備料金の算出に必要なので。』

「つまり記録では、警護の開始と終了の時間しかわからないのですか?」

『はい。どこに行って誰と会っているのかは料金の計算に関係ないので、記録はしません。お役に立てなくて申し訳ございません。』

 

一か八か様子を伺ってみました・・・。

 

「ちょっとお待ち頂けますか?」

何やら電話の奥がざわざわしている。

 

「そうですか・・・。わかりました。ご協力ありがとうございましたー。」

わりとあっさりとした反応。

 

よかった。しかし30分間の冷や汗を返して欲しい気持ちにもなる。

 

ともかくこのとき私は、警護対象者への義理と警察のメンツを両立するという目的を果たせたのでした。

 

ところで本当に、「記録」は存在しないのか・・・。あります。

ただ、「記録してる」ということを時々すっかり忘れてしまうものなのです。

 

後半おわり。

 

エスピー・ジョブ主催 木本亮

投稿者の記事一覧

□略歴□
京都大学工学部を自主退学しロンドンの警護訓練学校に留学。帰国後は通常の警備会社が対応しない「ややこしい案件」などを好んで下請け。そのご縁で2007年に大手警備会社の警護部門新設時に責任者就任。2014年に再び独立し、オンライン犯罪抑止システムの開発に取り組みながらセキュリティーチーム「SP7」の代表を勤める。

□警護技術監修□
フジテレビドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」('07)
映画「SP THE MOTION PICTURE 野望篇・革命篇」('10,'11)

□身辺警護考証□
NHKドラマ「4号警備」('17)

□著書□
『SPのお仕事』(産經新聞出版)

□コンタクト□
kimoto@sp-job.com

関連記事

  1. コラム要人警護 大統領の目の前に手榴弾 コラム「要人警護」 ブッシュ大統領の目前に、手榴弾!
  2. コラム要人警護9 熱心なファンとストーカーの境目 コラム「要人警護」 熱烈ファンとストーカーの境目
  3. コラム要人警護12 コラム「要人警護」 警護とは”祈り”である
  4. コラム要人警護14 コラム「要人警護」 銃規制を進められない、知られざる理由。
  5. コラム要人警護 エスピージョブ5 コラム「要人警護」 マルタイの秘密は守られるのか?!(前半)
  6. コラム要人警護6 エスピージョブ コラム「要人警護」 マルタイの秘密は守られるのか?!(後半)
  7. コラム要人警護3アイキャッチ コラム「要人警護」 警視庁捜査二課から電話が?!(前半)
  8. コラム要人警護18 コラム「要人警護」 銃の取扱い訓練 in ロンドン(後半)

人気記事

  1. 佐々木副社長アイキャッチL
  2. 佐々木社長 アイキャッチL
  3. haradal エスピー・ジョブ原田社長プリンシプル

スペシャルピックアップ

  1. 波多野監督アイキャッチプロローグ
  2. 波多野監督 大学篇アイキャッチ
  3. 佐々木副社長アイキャッチL
PAGE TOP